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凍解氷釈 14

やっとこさ、話が徐々に転がっていきます。
バカップル楽しみすぎたな、私。



拍手[3回]





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凍解氷釈 14








子供たちの入場とキャンドルサービスで、クリスマスミサは始まった。
病気の子供達を気遣っての、短めのプログラムが組まれていた。
子供達の親が右側の席を陣取り、一般の入院患者や見舞客らが左側の席を使うように指定されていた。
子供達の熱烈なリクエストで左側の最前列にアレックスと並んで立ち讃美歌を歌いながら、氷室は歌詞を見る風を装って決して祭壇を見上げなかった。正確には、見上げることができなかった。
だって。
神様に祈っても、もう許しては貰えない。
自分は後悔していないのだから、懺悔する資格すらない。
もし祈ることがあるとすれば……この嘘を、出来得る限り長く。
それはもはや神に祈ることではなく、祈る相手は悪魔あたりが関の山だと、心の奥で氷室は嘆息を漏らした。
時折隣を見れば、アレックスはまっすぐに祭壇を見つめているか、子供たちに笑顔を送っているかのどちらかだった。
まっすぐに神を見上げて讃美歌を歌う横顔は、不可侵な美しさを醸し出しているように氷室には思える。
おそらく彼女は神に乞うているのだろう、周囲の皆を救うためにも己の記憶を戻して欲しいと。
あるいは今の彼女であれば、視力を乞うているのかもしれない。
そんな視線に気付いたか、つとアレックスが氷室を見た。目を合わせた途端にくしゃりと表情全てで笑った彼女に、氷室もまた小さく微笑みかえした。
こんな風にアレックスが氷室に垣間見せる隙だらけの表情は、いつしか恋人だけに開示する特別な安心感を映し出すようになっていた。それはどんなトロフィより誇らしく、氷室に【今】を守り抜こうと奮い立たせる力を与えていた。
罪悪感や自責の念など、教会の中にいてすら風前の灯。


最後は【Hoide Chistus Natus Est】(今日キリストは生まれたり)を歌いながらの退場だった。オルガンの音に合わせて指先で拍子を取るアレックスの後ろを歩きながら、氷室はその背中を小さく感じて目を細めた。
ドアを抜けて教会の外に出ると、アレックスは振り向いて笑った。
「いいミサだったな」
「そうだね」
「タツヤと一緒に参列できて嬉しかった」
そう言って、ちゅっと唇の端に小さなキスをしてきたアレックスを氷室が抱き留める。と同時に歓声が上がり、先に退場していた子供たちに周囲を取り囲まれた。
「アレックスお姉ちゃんどうだった?!」
真っ先に飛びついてきたのは理紗だった。
「最高だったぞ!理紗!上手に歌えてたな!」
彼女の身長に合わせて屈むや否や、両頬にキスを贈って手放しに褒めるアレックス。
続けて子供たちを褒めちぎって、頭を撫でたりキスしたり。
子供達は大喜びで頬を上気させていた。
大いに叱り、大いに褒める。それがアレックスの身上だったと、懐かしく彼女を眺めながら氷室も笑顔で子供達に接してゆく。
「アレックスお姉ちゃん、理紗ね、理久にクリスマスプレゼントをナイショで買いに行きたいの。お姉ちゃんに売店を案内するってことにして一緒に行って欲しいの。…ダメ?」
こそこそと理紗がアレックスに耳打ちした。
「売店?」
首を傾げたアレックスに、理紗はなおも言い募る。
「売店にミニカーを売ってるの。理久いつもそのミニカーを見てるの理紗知ってるの!それを買ってあげたくって」
弟思いなその言葉に、アレックスはにっこり笑顔で応える。
「私も売店に行ってみたかったんだ。連れて行ってくれるか?」
彼女達のやりとりを、氷室はどうしたものかと考えながら聞いていた。
アレックスを一人で行動させることへの不安は、どうしてもある。けれども彼女が買い物に行っている時間に、今日のウィンターカップの結果を調べて必要なやりとりをすることができるという計算もあった。それにアレックスがこの小さな女の子の願いを叶えてあげることを望んでいることも、勿論分かっている。一人で行動させるといっても、あくまで病院内のこと。多少何かあったとしても、すぐに対応できるに違いないと氷室は結論づけた。
「タツヤ」
だからアレックスが自分の名を呼んだ時に、氷室はすんなりと笑顔を見せることで二人に承諾の意を伝えていた。
"I heared your secret talk.I don't opposed it, but you looks little bit tired,hon.Don't be too long."(君たちのナイショ話は聞いてたよ。反対する気はないけど、君は少し疲れて見えるよハニー。あまり遅くならないようにね)
"I know,Big daddy.Don't sweat it" (分かってるよ、おっきなパパちゃん。心配すんなって)
釘を刺すように言った氷室の頬に大袈裟にキスをして、アレックスは楽しそうに笑って手を振った。
子供好きのアレックスが、子供の前で取り乱すわけがない。ましてや取り乱す要素もない。
そう思ったからこそ、氷室はわずか一瞬その手を離すことを選択した。
「俺は先に病室に戻って待ってるよ。理紗ちゃん、アレックスのことをよろしく頼むね」
そしてだからこそ。
氷室は軽い気持ちでその言葉を告げて手を振ったのだ。
頬を染めて何度も頷く少女が、どれほどの気持ちで彼の言葉を受け止めたかなど知る由もなく。






「なんでこんな大事な時期に入院なのよ!鉄平ったら」
相田リコは不機嫌を隠さず、早歩きで病院に足を踏み入れた。
「しょうがねぇだろ!検査入院なんて空きがある時くれぇしか入れねぇらしいんだから」
日向順平が負けじと速足で並びながら、彼女を諌める。
相田の不機嫌な理由は明白だ。今日もなんとか勝利したとはいえ、エースである火神大我の不調は深刻だった。
フィジカル面の問題でないことは大会前から分かっていたけれど、試合が進むにつれて調子を上げていくに違いないという相田を始めとした周囲の目論見が外れたことは大誤算だった。
火神のメンタルの弱さをフォローするのが得意だった木吉鉄平の不在に、彼女が苛立ったのも仕方のないことではある。
「それにしたって!よりによって」
「準決勝・決勝に被るよりマシだろ?!」
「そりゃそうだけど!」
何を言っても語気を荒げるばかりの相田に、日向はピタリと足を止めた。大きく息を吐き出してから困った表情で頭を掻いて、相田が振り返るのを待つ。
「…コーヒー奢ってやっから、ちょっと頭冷やしてから行こうぜ」
もっともな一言に、相田は唇を尖らせて日向を見た。
「…ごめんなさい」
「謝んなよ」
「ううん、ホントに頭冷やさなきゃ、よね」
コートから少しだけ覗いた指が前髪を引っ張る。大学生になってもマニキュアひとつ塗られていない爪は、彼女が変わらず誠凛バスケ部に心血を注いでいることを如実に語っていた。
気を取り直した相田が日向を見上げた視線の動きの中、彼女の目は見覚えのある鮮やかな金髪を捉えた。
「え?!」
相田の唇から声が漏れ、日向も何事かと彼女の視線の先をたどる。
売店から出てきた、短めのショートボブに白いマントの少女と手を繋いで歩く長身の金髪女性は。
「アレックスさん!」
相田は思わず駆け寄っていた。
今朝集合した時から浮かない顔をしていた火神を問い詰めた結果、彼は本当に苦しそうに言ったのだ。
俺のせいでアレックスが風邪拗らせて肺炎になって入院してるんです、と。
それ以上は聞いてやってはいけないのだろうと、誰もに思わせるだけの重い声で。
望むように力を振り絞り切れない後輩達への苛立ちと、上がらないテンションは、きっと鉛のように火神の足を重くしていた。
それでも踏ん張って戦い切ったのは。
「タツヤに言われたんスよ。アレックスは俺が高校最後の大会で優勝するトコ見に来たんだって。…だから、大丈夫なんだ、です」
自分に言い聞かせるように、火神が呟いたその言葉がよりどころだったのだろう。
そんな苦しい後輩の姿を見せられた後だったから。
「…誰だ?」
きょとんと首を傾げた彼女が、いつもと違うことになど気付ける訳もなかった。
「理紗、お前の知り合いか?」
隣の少女に優しく問いかけるアレックスは、少なくともパっと見て入院を余儀なくさせられている病人には見えず。
「何言ってるの?!アレックスさん、肺炎って嘘だったんですか?!元気ならどうして今日の試合見に来てくれなかったんですか?!」
相田が責めるような口調になってしまったのも、致し方ないことだった。
「試合?」
眉を寄せて聞き返したアレックスの不安そうな様子に、日向が違和感を覚えて相田を止めようとするより早く。
「ウィンターカップじゃないですか!こんな時にふざけないで!」
相田の放った怒気を纏った言葉は、アレックスを直撃した。
「っ!!」
「アレックスお姉ちゃん!大丈夫?!」
俯いてこめかみのあたりを両手で押さえたアレックスに、隣の少女が金切声をあげた。









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私の勝手な願望で、日向・木吉・リコたんの3人は相変わらず状態です。
今後ちょろっと火リコっぽく感じられる場面あるかもしれませんが、リコたん周辺はカプなしでいきますので、そこらへんは安心して読んで頂ければと思います。



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黒バスのアレックス中心に、アレックスの幸せを模索しようと考えます。アメリカ組かわゆー! 陽泉さん誠凛さんも好き。みんな幸せになると良いです。

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