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凍解氷釈 13

まだそんなに書いた気はしてないのにもう13話目とか己の悠長な書きっぷりに怒りすら覚えますが、よろしかったらゆるゆるおつきあい頂けたら嬉しいです。



拍手[3回]


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凍解氷釈 13



目を覚ましたアレックスの視界に入ったのは、小さなクリスマスツリー。そしてその木の下にちょこんと置かれた小さな箱と小さな花束。
薄く靄がかかったような感覚に、幾度か瞬きをする。僅かに眼球が痛んだけれど、瞬きを繰り返すうちに輪郭はぼやけているものの視界はクリアになっていった。
「アレックス」
声を掛けられた方を見れば、氷室が笑顔で近づいてくる。
まるで宝物を見つけたかのような表情で差しのべられた手に、アレックスは自然に目を細めて自分の手を重ねた。
何かがすっぽりと抜け落ちたままのような違和感に不安を覚えそうになる刹那、身体を引き上げられる感覚が重なって氷室の腕の中に収まる。
"Good morning, my princess"
恭しくそう告げて指の背にキスを落とし、次に鼻先にキスをする。流れるように自然な仕草は、彼が「いつもの」習慣に従っているだけのように見えるには充分だった。
それらがアレックスにもたらすものは、安心感。
大丈夫。自分の居場所はここで間違っていない。
その想いはアレックスを穏やかに微笑ませた。
"Morning,honey.Sleep well?" (おはよう、よく眠れた?)
氷室の首に手を掛け、その頬にキスをする。
"Not really" (実はあんまり)
"You changed your outfit.Don't tell me you stayed up?! Are you OK?"  (服変わってるな。まさか寝てない?大丈夫か?)
"Yeah...I couldn't sleep thinkin' of you keeps me up all night" (んー…君のこと一晩中考えちゃって眠れなかったよ)
くすくす笑いを噛み殺しながら芝居がかった口調で言う氷室に、アレックスは眉尻を下げた。
"Don't tease me" (からかうなよ)
拳を握って氷室の腹に軽く当てながら、こみ上げてくる楽しさにアレックスは心が軽くなってゆくように感じた。
こんなに軽やかな感覚は久しぶりだと思った瞬間に、アレックスはふと疑問を覚える。
どういうことだろう。この久々という感覚は、いったいどこからやってきたのか。そして昨日の彼と今日の彼とに一見しただけで微かな違和感を覚えるのだけれど、それが何なのかアレックスにははっきりと掴めなかった。
"Because you're so cute,sleeping beauty" (だって君があんまり可愛いからだよ、眠り姫)
腹にあてられている握り拳をやんわりと手首から握って、ちゅっと音を立てながら数回指や親指の付け根にキスが落とされる。それらの甘い仕草を見ながら、アレックスは違和感の理由である彼の首に昨日はあったチェーンの不在に気付いたけれど、何故かそのことを尋ねる気にはならなかった。
アクセサリーを変えることなんて、誰にでもあることだ。毎日とっかえひっかえする若い男の子だって珍しくもない。
自分にそう言い聞かせていることに、アレックスは気付かなかった。
氷室がそんな彼女の拳を、ゆっくりと開いてゆく。
そっとその掌に載せられた小さな箱。
"Tatsuya?"
幾許かの戸惑いを隠せず右上がりの声で呼びかけたアレックスに、氷室はただ微笑んだ。
"Merry chiristmas Alex"
笑顔に促されるままに、アレックスはリボンの端へと手を伸ばす。
現れた箱を開くと、金色に輝くクロスのネックレスが入っていた。
"Oh my god"
驚きに目を見開いたアレックスを、氷室は楽しそうに見た。
"I didn't expect this situation,It's just as well"(この状況は予想してなかったけど、ちょうどよかったね)
華奢な金色の鎖は氷室の指が持ち上げるときらきらと煌めいた。
"God be with you" (神様が君と共にありますように)
静かにそう告げて、氷室はアレックスの首にネックレスをかけた。
彼女の背に回った彼がその時どんな表情をしていたのか、彼女に知る由はなく。
僅かに、ただ僅かに。
そんなに切ない祈るような声で囁かれたら、呼吸も苦しくなってしまうと思ったけれど。
でもそれも、離れている時間の長い遠距離恋愛が故かとも思え。
"Thank you my love"
感謝のキスを何度も贈って、アレックスは甘やかなクリスマスの朝を楽しんだ。
カーテンを開けば、僅かながらも雪景色。
美しい、日本の冬の朝だった。







不平を言いながらも、アレックスは概ね機嫌よく眼科や脳外科の検査をこなしていった。
仮のものではあったが、今の視力に合せた眼鏡も出来上がって眼科で渡されたことも、彼女の気分を良くしていた。
時折頭痛がある様子を見せては氷室を心配させながらも、大きな乱調はないといえたであろう。薬が効いているのか自制内で収まっている様子だった。


一日のスケジュールを終え、約束のクリスマス・ミサの時間が近づいていた。
「アレックス。まだ時間はあるし、少し横になった方がいいよ」
氷室が何度もそう言うのに、子供たちの為に…とアレックスは早々に私服に着替えて讃美歌の練習をしていた。
「眠くないから大丈夫」
「そうじゃなくて、今の君は何種類も薬飲んでいるし疲れが溜まりやすいんだってば」
「だって眠くない。歌うなら、上手に歌ってやりたいんだ。タツヤももう一度一緒に練習しよう」
「俺は高校で散々歌ってるから間違えないよ。君の讃美歌だって完璧だよ」
「いや、日本語で歌うのは慣れないから難しいんだ」
「気持ちは分かるよ、譜割りが変わるから難しい。でもさっきから一度も間違えてないから」
「そう?」
「そうだよ。だから少しでいいから体を休めて」
病室のドアが開いたのは、言い聞かせていたその時だ。
「アレックスお姉ちゃん!一緒に教会に行こう!」
可愛いお揃いの白いマントに身を包んだ理紗と数人の子供たちがやってきた。小さな女の子たちは口々に「お姫様だ」「王子様だ」と興奮した様子で子供特有の高い声を上げる。
「理紗!可愛いな!すごく似合ってる」
「アレックス」
いかにも大歓迎と言わんばかりに両手を広げて理紗を迎え入れようとするアレックスに、氷室は思わず尖った声をかけた。その氷室を軽く睨みながら、アレックスは人差し指で彼の心臓の辺りを軽く突いた。
「タツヤ、心配しすぎだ。あたしは大丈夫」
そう言ってニコッと笑うアレックスから、これ以上のやりとりはこの場で無用という意思が伝わってくる。氷室は両の掌を見せて溜息をつくことで降参を伝えた。
「Merry christmas!!どの子もみんな可愛い天使だな!きっと神様もキスをくれるさ」
全ての子供たちにハグと額への祝福のキスを贈り、アレックスは慈愛に満ちた眼差しを子供たちに送る。
「メリークリスマス。サンタクロースからのプレゼントはもらったかな?」
氷室の問いかけに子供たちが一斉に頷いたり手をあげたりして、プレゼントをもらったことをアピールした。アレックスと氷室はその可愛らしさに目を合わせて微笑み合う。
「そっか、じゃあみんな良い子の天使だね。僕たちはこの病院の教会に行くのが初めてだからよろしくね」
子供たちは大喜びで先を争って二人の手を取り、教会へと案内すべく歩き出した。
最前列で一緒に歌って欲しいのだと、一生懸命説明する子供たちにアレックスは「勿論だ」と満面の笑顔で応えていた。









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コーチをお手伝いしてる小説のエピソードを見てから、氷アレと子供たちの相性の良さに萌えてまして。
二人はいい感じに子供たちを導きそうだなーって思ってによによしています。





"God be with you"という言葉は、宗教の言葉であると同時にある言葉の元の形です。
分かる方には先の展開が少しお分かりになるかと思うのでちょっと切なくなってもらえたら嬉しいし、分からない方には最後の方で種あかしがあるので楽しんで頂ければと思います。


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黒バスのアレックス中心に、アレックスの幸せを模索しようと考えます。アメリカ組かわゆー! 陽泉さん誠凛さんも好き。みんな幸せになると良いです。

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